尾崎ふみ緒

Quotes of The Day

Know Your True Enemy

彼女が喋りだしたとき、それはまるで誰かが彼女の子音をやすりで磨き、母音をふんわりと膨らませたかのようだった。彼女は飾らずに喋ったが、その言葉には力がこめられていた。「娘たちの本来の敵は父たちや息子たちではない」と彼女は宣言した。「わたしは間...
人は奇っ怪、世は不可解

人は言葉で嘘をつく

11月9日の朝、起きて新聞をぼーっと眺めていたら、『ホームレス夫婦、「塩の道」1014キロを歩く』の書評が載っているのを見てちょっと驚いた。 いや、驚いたというか、原書が2018年に出版されてから7年近く経って翻訳が出たから、ということでな...
連載小説【狂おしい棘】

狂おしい棘 第五話

国を挙げての国葬も、過ぎてしまえば何ごともなかったような顔で日常が戻る。新聞やラジオ、テレビが口を揃えて主張するように、「最高指導者が死のうとも、我々が真の共産主義社会を実現するための歩みを止めることはない」のだ。「同志ガリェーチンの遺志に...
人は奇っ怪、世は不可解

天才のお仕事

アル・ヤンコヴィックって日本じゃさっぱり知名度ないけど、ワタシは素晴らしい才能だと思ってる。 パロディであっても、オリジナルの要素を尊重しつつ、自分なりの個性を表現してしまう手腕は天才でしょうに。 せめて有名どころのパロディだけでも見て欲し...
短編小説

悪い男

顔を見た瞬間、「まずい……」と思ったのもつかの間、向こうが気づいたのが早かったらしい。私が後ろを向くよりも先に、「ああ、山村さん……」 と言うあいつの声の方が早かった。 見つかったか……。 でも、常識的な社会人として気まずい顔は一切見せず、...
短編小説

Nameless Soul

皆こう言う。彼がそんなことをするとは思わなかったって。 彼は、真面目で、物静かで、優しい子だった。とてもあんな酷いことをするような子に見えなかったって、皆口を揃えて言ってる。 でも、真面目とか、優しいなんて、余程のクズでもなけりゃ誰にだって...
短編小説

恋は善きもの

僕は何でも知っている。知らないものなんて何もない。リンネの『植物の体系』を絵本にして育った僕の頭の中には、この世界のすべてが詰まっている。 僕のことを、みんなは「天才」とか「神童」なんて言っている。 でも、そんな褒め言葉、言われてもちっとも...
人は奇っ怪、世は不可解

思春期はガラスの靴で綱渡りする季節

1954年6月22日午後3時30分。ニュージーランドのクライストチャーチ。ヴィクトリア・パークのそばにある喫茶店に、二人の少女が取り乱しながらやって来た。「誰か、助けて!」「ママが怪我をしたの! 酷い怪我で、死んでるの!」 店のマネージャー...
人は奇っ怪、世は不可解

闇堕ち美子ちゃん、あるいはエリザベス・ホームズは美文字だったのか問題

いつぞやあった某女優の不倫騒動は、(当事者以外の外野が)大騒ぎしたわりに思ったよりあっさり解決して、どんな結果であろうとまあよかったよかったてなものであった(そして、今年になって掘り返されることになろうとは、この時は誰も想像していなかったの...
人は奇っ怪、世は不可解

声にならない悲鳴が聞こえる人

デヴィッド・フィンチャーといえば、『セブン』や『ゴーン・ガール』などのヒット映画の監督として有名な人だけど(監督デビュー作の『エイリアン4』は興行的に失敗したってことで無視されがちだけど、私は駄作なイメージないなぁ)、映画監督になる前はミュ...
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