オアシスの再結成ツアーの来日公演が無事終了して、私は行ってませんけどひとまず良かった良かったと安堵しております。
ギャラガー兄弟のことだから、まーたぞろ兄弟ゲンカして「お前となんかやってらんねーんだよ!」とぶち切れてどっちかが離脱、やっぱり無理でした、って流れになる可能性だってまったくゼロではないはずなので、この調子で完走して欲しい(マジで祈念)。
と、こんな風にヒヤヒヤさせてくるギャラガー兄弟というかオアシスだけど、彼らがUKロックシーンの中心に現れた当時を振り返ると、何だか運命の神さまがそのタイミングでオアシスの登場を準備していたのかというくらい、ある時代の節目とぴったり重なってたような気がしてしまう。
というのも、デビュー曲の『スーパーソニック』がイギリスで発表された4月11日の直前の、4月8日にカート・コバーンが亡くなっているのが発見されている。
カートといえば、グランジ・ムーブメントを代表するバンド、ニルヴァーナのフロント・マンであり、アルバム『ネヴァーマインド』はその世代(ジェネレーションXとか言われてた、今のZ世代とかアルファ世代の親の世代か)の不安や苦悩を代弁していると言われて、カートは一躍若者のカリスマのように祭り上げられてしまった。
しかし、世間から勝手なイメージを作り上げて語られ、非難されたり嘲笑されたり、また一方でレコード会社から掛けられたプレッシャや自身の薬物依存、加えて昔から苦しんでいた双極性障害や原因不明の胃痛などが複雑に絡まり、酷い抑うつ状態に陥った結果だろう、自らの手で死を選ぶことになってしまった。
そんなカートは、亡くなる直前に『I Hate Myself and Want to Die』というタイトルの曲をバンドとして発表している。つまり、「死にたいくらい自分のことが大っ嫌いなんだ」ってこと。
彼自身は、タイトルに深い意味なんかないよなんて言っていたらしいけど、結局この言葉通りの選択をしてしまった。
彼の死に対する衝撃を、当時のロックファンは忘れることはないと思う。きっと30年経った今でも、「自分がカートの死を聞いたあの日、あの時」について語ることが出来るんじゃないか。
それくらい彼の存在は、カート自身が意図しないほどに大きくなっていたのだ。
そして、グランジの象徴だったカートが居なくなったことで、グランジ・ブームは終わりを迎えることになるわけだけど、この先の未来がまったく見えない、どんよりとした音楽シーンの空気を吹き飛ばすように、と同時に自分自身を否定するしかなかったカートに対する、大西洋の反対側からのアンサーソングでもあるかのように、
「お前の代わりなんて誰もいないんだよ、どんなことがあってもお前自身でいなきゃならないんだ」
と高らかに歌って登場してきたのが、マンチェスターのマイルドヤンキー(やってることがこれにしか見えない)バンド、オアシスだった。
デビュー以後、オアシスもまた、ニルヴァーナに負けず劣らずのビッグバンドになるわけだけど、カートと違ってノエルもリアムも自己嫌悪とか自己否定なんて感情と無縁なまま、今まで生きている。ように見える。
勿論、人間生きてりゃ傷つくこともあるし、傷つけてしまうこともあるわけで、無敵に見えるギャラガー兄弟だってそんな時は、
「ああ……、オレってダメだなぁ」
と思うこともあるかもしれない。そんな姿、全っ然想像出来ないけどな(酷い)。
でも、二人ともどんなにダメダメな自分だろうと、絶対見限ったりしないと思う。
こんな自分でも、こんな自分で生きていくんだと、そんな風に自分自身を受け入れている気がする。ある種の覚悟というか。
そんな「陽気な諦めと覚悟で、ままならない人生を生きていく」曲を、どこにそんな才能があるんだか、なそこら辺にいそうなマイヤン兄貴(ノエル)がどんどこ作り、これまた他はともかく声だけは最高なマイヤン弟(リアム)が歌うもんだから、聴く者の胸を熱くしやがるわけだよ。ちぇっ。
『ドント・ルック・バック・イン・アンダー』なんてもう、「第二のイギリス国家」みたいな扱いだ(それどころか、国家こっちにすればいいじゃんって言うヤツまでいる)。
この曲の、
「こんな俺たちに、大切な君の人生を託したりしないでくれよ」
という切実な思いは、ロックスターを純粋に夢見た少年だった頃の気持ちを今でも覚えているからこそ、聴いているこっちにも切なく伝わってくるのだし、自分の人生は自分自身で作っていくしかないんだと思えるのだ。
「ブラーは女の子のアイドルで、オアシスは野郎のバンド」と言われたものだけど(そして、私は女子なので勿論ブラーが好きでした)、年を重ねるごとにオアシスの良さが身に沁みて分かってくるようになった。
今でもブラーのポップな曲は大っ好き! だけど、ムカつく日々をオアシスの曲を皆でシングアロングしながら逞しく生きていこうぜ! って感じも良いもんだよねーとしみじみ思えるので、歳を取るのも悪くないもんですよ。
最後に、個人的にオアシスの曲で他人事じゃなくて困るくらい大好きなのは、『インポータンス・オブ・ビーイング・アイドル』です。
良い曲だなーって思いながら対訳読んだ時、あまりに自分過ぎて頭を抱えました。
でも、この曲で描かれてるヤツのことを「オレのことじゃん!」って思う人は世界中にたくさんいるようですし、ノエルも「最高傑作」って言ってるので良いんです。
って、本当に良いのか?


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